びとうろうぽ記

欲とポケモン連れ

ヘッダー/パソコン用の画像

MENU

「ポケモンたちとの甘い冬」は「ポケモンの世界」ってことで本当にいいんですか??

ポケモン公式YouTubeチャンネルにて、ポケモンたちとの甘い冬」という動画が全3話公開されました。

www.youtube.com

www.youtube.com

www.youtube.com

 

*************

ある料理好きの男性とポケモンたちの、おいしくてあたたかい日常風景を描いたショートムービー「ポケモンたちとの甘い冬」第1話「ポケモンデザートスペシャル」が公開!
「もしぼくがポケモンたちといっしょに暮らしていたら、朝は早く起こされるに違いない……?」

ある朝、ポケモンたちの声で起こされた主人公は、二度寝の代わりにポケモンたちへのおいしいデザート作りを始めた。
そこで彼が作ったのは……?
----
ポケモンたちとの甘い冬」は、中国の大人気映像クリエイターチーム「日食記」によって制作された全3話の実写×CG映像作品。
エピソードごとに、ポケモンの世界に暮らすひとりの男性とポケモンたちとのおいしくてあたたかい一日を描いています。

 

出典:【公式】「ポケモンたちとの甘い冬」第1話「ポケモンデザートスペシャル」 - YouTube(閲覧2022年2月23日JSThttps://www.youtube.com/watch?v=iFkTTUV1q2Y

 

まず、映像のポケモン達はかわいいです。メンツがカントーのみなのは仕方ないとして、ピカチュウの毛並みのふさふさ感とか、ポケモン達の動きや表情はかわいくできていると思います。CGの方向性としては「ミュウツーの逆襲 EVOLUTION」に近い感じですかね。

特に、第3話に出てきたコダックデザインの飴が好きです。コダックが自分の姿の飴を持つ姿がよい。あとピカチュウ以外のポケモンの声を当てた人が、クレジットの名前的に中華系の人っぽいのも新鮮でした。

動画のスクショ

 

 出典:【公式】「ポケモンたちとの甘い冬」最終話「甘い飴は冬の味」 - YouTube(閲覧2022年2月25日JSThttps://www.youtube.com/watch?v=qZwymxeDlRY

 

ただ、この動画の概要欄を見て驚いたのがポケモンの世界に暮らすひとりの男性とポケモンたち」と書いてあったこと。「もしポケモンが現実世界にいたら」ではなくあくまで「ポケモンの世界」を描いているということで間違いないんですか…?だとすれば、かなり違和感のある描写があるんですが、ポケモン公式はちゃんと監修の仕事をしているのか不安になりました。

 

この作品は、まるで「料理動画」のように、料理の手順や原材料とそのグラム数が登場します。そのスイーツの原材料に、おもいっきり「鶏卵*1」とか出てきてるんですけど、これは大丈夫ですか?ポケモンの世界、ポケモンと人間以外の生き物の存在はずっと濁し続けてますよね?

 

ポケモン世界の"動物"の扱いについて

ポケモン世界にポケモンと人間以外の動物が存在するのかについては、例えばライチュウやゴースの図鑑テキストに出てくる「インド象」のように、初期のポケモン図鑑には動物の名前がはっきり登場したり、ピカチュウの分類「ねずみポケモン」のように、ポケモンの分類に動物の名前が用いられている例はあります(分類に動物の名前が登場するのは最近もある)。

一方で、はっきりと動物の姿が作中に出てきたり、存在が示唆されるような描写は基本的にどのポケモン作品にもありません(アニメの作画ミスなどは除く)*2

ライチュウやゴースのポケモン図鑑は初期のゲームに登場したものであり、最近のポケモン図鑑に動物が登場することはありません。恐らく初期の頃はその辺りの設定が曖昧だったものの、現在は「ポケモン以外の動物は登場させない」方針になっているのだと思われます

 

そのことを踏まえると、今回の映像作品のポケモンが卵を含むスイーツを口にするシーンとか、これまで積み重ねてきたポケモンと(現実世界の)動物が同時に存在しない世界」を正面から崩しにきていることに強い違和感を覚えます。まさか、「ポケモン世界にポケモンと人間以外の動物は登場させない」方針はやめたんですか…?

 

全部ポケモンの可能性…?

考え方を変えて、あのタマゴやミルクやゼラチンがポケモン由来だと仮定することも可能かもしれません。確かに、現実世界の牛乳をそのまま置き換えたような「モーモーミルク」は既にあるし、タマゴが食材として登場した例もあります(サイズ感が違うけど)*3

その場合、その「ポケモンの世界」における(一部かつ多数の)ポケモンは、毎日人の手によって合法かつ計画的に殺されてることが前提になるんですけど、それでいいんですか…?「悪人を除いて、多くの人とポケモンは仲良く良い関係を築き暮らしている」という前提(ゲームなどのキャラのセリフから推定)と矛盾しませんか…?

モーモーミルクと牛乳の話は過去にしました(ミルタンクのミルクは誰のためのモノか - びとうろうぽ記)が、鶏卵も同様に、寿命を迎えるまできっちり世話してもらえる卵用のニワトリはまず存在せず、どこかのタイミングで殺されています*4。まあ、そうしないと碌な利益は得られないので当然ですし、ポケモンの世界でも同様のことが行われていると想定するのは容易なことだと思います。

ゼラチンは言わずもがな、動物の骨や皮が原材料なので、ゼラチンがそこにあるということは、その裏に生き物(動物)の死があったことは確定的です。もちろん、生き物の死体なんて都合良く手に入るものではないので、商品として安定した量や質を提供するには、人間が計画的に繁殖&屠殺をする必要があります。

ポケモン由来のミルク・タマゴ・ゼラチンが(商品化され)存在する(=産業動物的な取り扱いを受けるポケモンがいる)」ということは、「(フツーの)人間がポケモンに不必要な死を与えている(事実を許容している)」ということを意味し、「ポケモンを傷つけるのは悪人だけ」的な世界観との齟齬が発生します。よって、この動画に出てくる原材料がポケモン由来だと仮定して見ることも厳しいと思います。

 

なぜ動物を登場させることを”選択”したのか

ちょっとレシピを検索してみれば分かりますが、作中に出てきたシュークリームやタルトなどのスイーツは、どれも卵・乳製品等を使わずに作れます

ということはつまり、他にやりようがなかったから仕方なくタマゴなどが登場したのではなく、それらを動画に出すことを選んだということになります。少し検索すればわかることを、「知らなかった」で通すのも無理があると思います。

映像作品を制作したのはクリエイターチームの「日食記」だそうですが、制作を依頼し、監修する仕事をポケモン側はしているはずなので、これはポケモン側の仕事の雑さの問題です。

 

ポケモン世界に動物を(間接的とはいえ)出すことについて、何か考えたり、疑問に思ったりしなかったんでしょうか。「鶏卵もゼラチンも動物(だった)ことを理解したうえで、ポケモンの世界に動物を出すことを選択した(タマゴなどを使わないレシピでの動画制作を依頼しなかった)」のか、それとも「あれらが動物であるという意識が皆無で、何も考えずにあの内容にOKを出した」んでしょうか。はたまた、「タマゴもミルクもゼラチンも、ポケモン由来だと仮定して映像を楽しんでもらえれば…」とか思っていたんでしょうか。

いずれにせよ、「ポケモンのプロデュース」という仕事を雑にやってんなぁという印象です。いくらCGのポケモン達が可愛くても、ポケモンでも人間でもない生き物の影がチラつく「ポケモンの映像作品」には没入できません。コンセプトや雰囲気がよかっただけに、とても残念です。

 

*************

YouTubeのコメント欄をチラ見した感じ、絶賛している声が多くて本当にムリって感じです。ポケモンの世界にポケモンと人間以外の動物を出さない方針(推定だが存在するでしょ)はやめたのか??やめてないならちゃんとその方針に従ってください。色々とみていられません。でもお問合せからご意見を送るほどでもないかなって感じなのでモヤる。株ポケはポケモンブランドの毀損しないようちゃんと努めてください…。

 

最近のポケモンの実写系映像作品なら、海外版の『PokémonLEGENDSアルセウス』CM動画(下記に貼る5種類)がよかったですね。CGではなくあえてぬいぐるみでポケモンが表現された、90年~00年代っぽい雰囲気のショートムービー、元ネタとかはわからないんですが、なんとなく面白くて好きです。

画面に映る食材や料理も、動物由来だと断定できるものはないと思います。少し気になるのは、イダイトウ割れた破片でケガしてない?みたいなところくらい。

www.youtube.com

www.youtube.com

www.youtube.com

www.youtube.com

www.youtube.com

 

*1:動画内での表記は「卵黄」(第2話)だったりするが、見た目的に鶏卵で間違いないと思われる。

*2:細かい描写を取り上げれば、キャラクターの語彙に動物や虫が登場したり、ゲームの技エフェクトにそれらが登場する例もある。詳しくは、Bulbapedia(英語版ポケモンwiki)のAnimals in the Pokémon world - Bulbapedia, the community-driven Pokémon encyclopediaというページに、ポケモン世界のポケモン以外の動物についての情報がまとまっている。

*3:『ソード・シールド』の「ポケモンキャンプ」で作れるカレーの食材に「ゆでたまご」が登場する。

*4:「肉や卵をとるための実用鶏は、採算性を重点にして飼育期間を決めています。これを経済寿命といい、鶏本来の寿命に比べかなり短くなります。実用鶏は産肉・産卵の効率、つまり経費対収入からみた収益性の高い時期に解体して肉にしたり、採卵をやめて加工肉にします。」出典:鶏の一生(閲覧2022年2月25日JSThttp://zookan.lin.gr.jp/kototen/tori/t121_4.htm