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ピカチュウのしっぽのデザインをハートにした改悪を許さない

ポケットモンスター ダイヤモンド・パール(ダイパ)』にて、一部のポケモンに、性別によるわずかな見た目の変化が追加されましたが、これは改悪だったと思います。

このダイパのリメイクがもうすぐ発売されるので、改めてこの酷い変更についての問題と懸念を示しておきます。

 

 

■『ダイヤモンド・パール』について

2006年9月28日に発売された「ニンテンドーDS」のゲームです。当時のポケットモンスターシリーズ最新作であり、俗に「4世代」と呼ばれます(現在は8世代が最新)。2年後の2008年には、マイナーチェンジの『プラチナ』も発売されました。

そして今年2021年11月19日(金)にダイパのリメイク作として、『ポケットモンスター ブリリアントダイヤモンド』『ポケットモンスター シャイニングパール』(通称BDSP)の発売が決まっています。

 

 

■ダイパで始めて実装されたオスメスの容姿差

それまでは、例外(後述するニドランのこと)を除き、ステータスとしてのみ存在した「性別」が、一部のポケモンにて、グラフィック上でもその区別を確認できるようになりました。

シンオウ地方ポケモンはオスとメスで姿が違う!?


これまでもポケモンにはオス・メスの区別があったが、『ポケットモンスター ダイヤモンド・パール』では、その違いがいっそうわかりやすくなった。♂♀の記号だけでなく、画面に現れる姿がオス・メスで異なるポケモンが登場したのだ! そうしたポケモンは、オス・メス両方に出会うと、「ポケモンずかん」で姿を見くらべることができるようになる。どこに違いがあるのか、見つけ出すのも楽しいぞ!

 

出典:ポケットモンスター ダイヤモンド・パールポケモン 】|ポケットモンスターオフィシャルサイト(閲覧2021年9月5日)

https://www.pokemon.co.jp/game/ds/dp/pokemon.html

 

このわずかなデザインの変更は、すべてのポケモンに対して行われたわけではありません。しかし、デザインが変更されたポケモンは、その設定をその後のシリーズにも引き継ぐことになります。

 

ポケモンにおける性別システムの誕生

そもそもポケモンが、これまでどのように「性別」を扱ってきたか振り返ります。

まず、初代『赤緑』では、ニドランを除いてポケモンの性別情報はありませんでした。ニドランのみ、「ニドラン♀」と「ニドラン♂」が別種のポケモンとして存在し、今も図鑑上では別ポケモンとして扱われています。

その後、第2世代の『金銀』にて、タマゴシステム*1の登場と共に、すべてのポケモンに何らかの性別情報が付与されることになります。

そして第4世代『ダイパ』にて、性別によるわずかな姿の差異が追加されます。

このわずかな差異があるのは4世代のポケモンまでで、5世代(BW)以降のポケモンは、「性別による大きな見た目の差異のあるポケモン*2」こそあれ、わずかな差異のポケモンはいません。

 

ポケモンの性別システム概要

現在、ポケモン達の性別は「メス」「オス」「性別不明」のいずれかに決まります。「雌雄のどちらかに決まる」ポケモンもいれば、「メスのみ」「オスのみ」「性別不明のみ」のポケモンもいます。

どちらの性別の出現率が高いか、あるいは同等かといった違いも存在します。また、性別によって進化先や進化できるか否かが異なるポケモン*3や、性別によって能力や特性が異なるポケモン*4も一部にはいます。

現在900種類弱いるポケモンの中で、これらは例外的な存在であり、「メスまたはオスがいるポケモン」の大半は、性別による能力の差はありません*5

性別の情報はもっぱら、ポケモンのタマゴの親にする時や、ワザの「メロメロ*6」を使うとき、あとは個人の好みにおいてのみ意識されるものになっています。

 

■具体的にどのようなデザイン変更があったか

ダイパで追加されたデザインの変更は、おおよそ「公式絵*7と同じ姿」のポケモンと、「公式絵から少しデザインを変えた姿」にわかれます。

個人的に調べてみたところ、「公式絵と同じデザインのオス」は61、「公式絵と同じデザインのメス」は26、不明・判断がつかなかったのは7でした。この男女比の偏りの問題は後述します。

 

では、そもそも「わずかなデザインの違い」とはどのようなものなのか。例えば、ダイパの公式サイトにもあるように、「ウパー」は頭のヒレの数がメスの方が少ないです。また、「サイドン」や「アズマオウ」、「マンムー」など、ツノやキバのサイズはたいがいメスの方が小さくなっています。

 

性別によって見た目の違うポケモンの一覧はコチラのBulbapediaを参考にしました。英語ですが、画像付きでわかりやすいと思います。

List of Pokémon with gender differences - Bulbapedia, the community-driven Pokémon encyclopedia

 

■性別によるデザイン変更の問題点

ダイパにて行われたこのデザイン変更は、はっきり言って、行われるべきではなかった改悪だと思います。

まず、既に示したように、多くの場合(おおよそオス61に対しメス26)公式イラストがオス準拠になっています。これは「オトコこそフツーのスタンダード、無徴の、しるしのない存在である」という、既に支配的な考え方の再生産になっています。

 

有徴と無徴というのは難しい言葉だが、非常にざっくり説明すると「しるし(徴)」の有無のことで、しるしがあるかないかでデフォルトか例外かが区別される、という話だ。たとえば「作家」に「女流」というしるしがついた「女流作家」という言葉はあるが、「男流作家」はない。この「作家」が無徴、「女流作家」が有徴だ。これには「女性」の作家は例外的だ、という発想がひそんでいる。

 

出典:男たちはなぜ「上から目線の説教癖」を指摘されるとうろたえるのか(北村 紗衣) | 現代新書 | 講談社(3/4)(閲覧2021年9月5日)https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58402?page=3

 

制作側はおそらく無意識だったと思いますが、メスばかりデザインの変更を強いられたのは、この偏見を強化するという点で問題です。さらに、これが後付けで行われたという事実が輪をかけて酷く、許せない点です。

 

「デザインを変更した」ことにくわえ、変更内容にも問題が見られるポケモンがいます。例えば、「ソーナンス」は「メスにのみ口紅(のような模様)」があるし、前述したように、ツノやキバなどに差があるポケモンは、たいがいオスの方がそれらが大きいです。

「現実の動物もそうだから」とか言われそうですが、関係ないでしょう。そもそも現実の動物を見る人間の視点にも、ジェンダーに関わる偏見が確実に潜んでいるという問題もあるし、何よりフィクションなんだから、わざわざ現実世界の偏見を強化するようなデザインにする必要性もないです。

「オトコの方が、強く、攻撃的で、戦いに向いている」かのような言説は偏見です。これらの要素は、性差以上に個人差があると思います。

 

ピカチュウにも降りかかるデザイン変更問題

ポケモンの顔とも言えるピカチュウも、当時のデザイン変更に巻き込まれました。とても残念です。正直当時はまあいいか…くらいであまり気にしてませんでしたが、今はとても怒っています。

この改悪のせいで、すべてのピカチュウに性別の情報が付与されることになってしまいました。これが本当に迷惑、最悪です。

 

ピカチュウ」の表象が世に出る際、選ばれるのは理由の無い限りオスのピカチュウになっています。メスが選ばれるのは、決まって「オンナっぽい」シチュエーションに限られています。

オメガルビー・アルファサファイア(ORAS)』の「ポケモンコンテストライブ!」やイッツデモのグッズなど、「かわいさ」がアピールされる場でのみ、メスのピカチュウが選出されています。

これも、「フツーはオトコ、オンナは例外」といった現実を繰り返しています。また、「オンナ=かわいさ・おしゃれさ・華やかさ」といった偏見の強化にもなっています。

 

■性別情報がないのが、ポケモンのいいところだったのに

この改悪が行われたのは2006年発売のゲームということで、15年ほど前になり、すっかり定着していますが、いつの日か消えてほしい設定です。

 

ポケモンの素晴らしい点のひとつとして、人間とは異なり、性別情報を必ずしも付与する必要がないところがありました。

人間を描く時は、どう描こうとも性別情報がついて回ります。誰であれ、「女性的」「男性的」「中性的」など、いずれかに当てはまってしまい、「性別情報のない人間」を描くことは困難です。たとえピクトグラム並みに簡略化されていても、多くの人はその特徴の無い人間のシルエットを、無意識に男性として認識すると思います。

 

一方、人間以外の動物は、一部を除いて基本的に、ぱっと見で性別は分かりません。犬や猫を想像してみるとわかりますが、軽く目にした時の姿や動いている様子などでは、「性別を意識せずに見る」か「どちらの性別の可能性もある存在」として受け止めるのではないでしょうか。

もちろん一部の鳥など、雌雄で姿が明らかに違う動物もいますが、その性別を判断するには知識が必要であり、その一部例外を除いて、ぱっと見で性別をイメージさせられる動物は、全体の中では稀だと思います。

 

ポケモンも、現実の非人間動物と同様に、ぱっと見では性別を判断できない、性別に関する情報が入ってこないところがあったのが、ポケモンを好きな理由やきっかけのひとつでした。

かわいい容姿でも、ゴツいからだつきでも、どんな動作をしようとも、それでそのポケモンの性別が決定づけられないこと。基本的に服を着ないし言葉も話さないので、服装や口調、一人称や本人のアイデンティティなどで性別を意識せずに済むことが、人間キャラより快適で、ポケモンを推せる根拠でした。

 

それが、このわずかなデザイン変更により、台無しになってしまいました。特にピカチュウピカチュウがそこに現れたとき「(性別情報の無い)ピカチュウ」ではなく「オスのピカチュウ」だといちいち判断されて(できて)しまうのが嫌すぎる。

ただでさえ現実世界では、過剰に性別が強い意味を持っていて生きづらいのに、それをポケモンの世界やコンテンツにまで持ち込まれて最悪です。

 

あと、自分でポケモンを描くときに、性別の選択を迫られるのも本当に嫌。全部公式絵と同じにするとオスが多くなり、「オトコがスタンダード」の再生産に荷担することになるし、メスのデザインで描くと、このわずかなデザインの性差の存在を肯定することになるのが無理。

「性別を決めないピカチュウ」を描きたくとも、しっぽを隠すような処理でもしないかぎり、「これはメス/オスのピカチュウを描いたんだね」という判断が下るのが嫌。繰り返しますが、人間ではなくポケモンを好きなのは、このうざったい性別情報から解放されるというのがありました。モヤモヤしながらも受け容れていた時期もありますが、今は明確に問題だという認識を持っています。

 

■この設定がなくなりますよう…

5世代以降のゲームでは、このわずかな性差のあるポケモンはいないので安心していたのに、『Let's Go ピカチュウ・イーブイ(ピカブイ/LGPE)(2018年発売)』で「メスのイーブイだけ」デザインの変更を強いられて最悪だなと思いました。もうこれ以上追加するとか絶対やめてほしい…。

どうも、来年(2022年)発売予定の『Pokémon LEGENDS アルセウス』の最新映像に映っていたケムッソの見た目が、これまでのケムッソと少し違うよう(頭の後ろのトゲが黄色い)でちょっと不安です。ゆうて「ヒスイのすがた」とかであってほしい…。

 

代替案としては、わずかな見た目の差はすべて「個体差」に回収してほしいと思っています。ツノの大きいメスもいるし、小さいオスもいるよ!的な。今更設定をなかったことにするのも難しいと思うので、無難な妥協案だと思うんですが…。

 

■まとめ

『ダイパ』にて初登場した「雌雄でわずかに姿の違うポケモン」の設定は、ポケモンのいいところを潰し、性差別的な社会構造の再生産に荷担する改悪設定です。早く死に設定にしてほしいところですが、このたびのダイパリメイク(BDSP)などでシンオウ地方にフォーカスされることで、この設定を改めて強化される可能性を懸念しています。

どうかこの設定がなくなることを願います。BDSPとレジェンズは普通に楽しみにしているので、素直に楽しませてくれ…。

 

*1:特定のポケモンを2匹「そだてや」に預けると、ポケモンのタマゴが手に入るシステム。タマゴが手に入る2匹の条件は、基本的に「同じタマゴグループ」で「オスとメスの組み合わせ」の場合に限る。

*2:具体的には、5世代の「ケンホロウ」「プルリル」「ブルンゲル」、6世代(XY)の「カエンジシ」「ニャオニクス」、8世代(剣盾)の「イエッサン」がいる。どのポケモンも、公式イラストにて、雌雄両方が描き下ろされている。わずかな差異のポケモンは、描き下ろされていない。

*3:例えば「ミノムッチ」はメスのみ「ミノマダム」に、オスのみ「ガーメイル」に進化する。

*4:例えば「イエッサン」は雌雄で特性・種族値・レベルアップで覚える技も異なる。

*5:『金銀』においては、性別と個体値に関連性があったようですが、現在はありません。出典:ポケットモンスター 金・銀 - Wikipedia

*6:「異性にのみ効果を発揮する」という「メロメロ」や「ラブラブボール」なども、異性愛規範的で問題だと考えますが、ここでは詳しく説明しません。

*7:基本的に杉森建氏が公式イラストとしてまとめ上げたものを差す。ポケモン公式サイトや攻略本に載る、ポケモンの前身を写したイラスト。ポケモンだいすきクラブの「ポケモン図鑑」に載る絵がこれにあたる。